「あの山をピンク山と呼んでいるんだ」
七十メートルにも満たない小さな山の斜面に、たくさんの桜が植えられている。時季にはサラサラと白い花びらが舞うトンネルに変わる麓の道を、ゆっくりと自転車を押して歩く。時代という名のエネルギーがテクノロジーを推進させ、一つのデバイスで遥か彼方の相手に写真を見せる事が出来るようになった。春の心地よい風に邪魔されながら淡紅色を一枚、収める。今は、遡る事のない時制という波に乗ってしまった。月日が流れる毎にフレームに収まる桜色は、繊細さを増し鮮やかになり、そして、葉が増えるようになった。今年もまた、あの日と同じ日に、同じ花を切り取るのだ。薄紅色の絨毯の先には、青春という名のモラトリアムがあったのだ。
意外と長書けるのですねこれ。